【国家試験 総評】第109回薬剤師国家試験解説
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はじめに
総合
第109回薬剤師国家試験の全体としての難易度は、108回と比較すると【やや難】と考えられるが、第108回を【平易】と位置付けると、通常通りの難易度に戻ったと言える。
必須問題
化学、衛生、病態・薬物治療では図やグラフの問題が出題され、難易度は上昇したと考えられる。薬理や薬剤では医薬品の構造式から解答を選ぶ問題が出題された。法規や実務は基本事項に関する出題が多く見られた。必須問題全体としては得点しやすい問題が多く、108回と比較すると【中等】であったと考えられる。
理論問題
理論問題全体としての難易度は、【やや難】であった。
化学・生物の連問(問110~111)が1題、物化生・衛生・法規の連問(問120~122)が1題、薬剤の連問(問177~178)が1題、薬理・病態・薬物治療の連問が4 題(問154~155、問157~158、問165~166、問167~168)出題され、108回と比べると連問が増加していた。
理論問題全体として、科目間の繋がりを考えさせる問題が継続して出題されている印象である。
実践問題
実践問題は、科目による差はあるが、全体としては他科目の繋がりが意識しなければならず、108回と比較すると【やや難】と感じる難易度であった。
108 回では出題されなかった実践問題での連問が109回では乳がんの問題で出題された(問264~問267)。
例年よりリード文が長く、読み取るのに時間がかかり、必要な情報を読み取る力が必要であった。
必須問題解説
1.物理【中等】
グラフから読み取る問題の出題はなかった。ただし、グラフのパラメーターを問う問題(問4)があったため、少し難しく感じたかもしれない。計算問題(問5)に関しては平易であった。
2.化学【中等】
グラフから読み取る問題(問9)があり、解きにくさを感じたと思われる。生薬の問題(問10)は、薬理の知識と絡めた内容になっており、今までと出題形式が変化していた。
3.生物【平易】
図や構造から判断させる問題の出題はなく、基本事項に関する問題がほとんどであった。
4.衛生【中等】
グラフや構造式を使った問題が3題(問19、問21、問25)みられ、解きにくいと感じたかもしれない。108回では出題されなった放射線に関する問題(問23、24)が出題されていた。
5.薬理【平易】
例年通り、ほとんどが既出薬物の標的分子や作用機序を中心に出題され、得点しやすいと考えられる。機序と疾患名から薬剤(新薬)を選択させる問題や構造式から解答を導く問題もあった。
6.薬剤【中等】
基本的な内容が多く出されていた。図や構造式を使った問題が6題(問41、42、問43、問50、問52、問55)、計算問題(問46)が1題出題されていた。計算問題に関しては、公式に代入するだけで解ける問題であり難易度は高くない。
7.病態・薬物治療【中等】
病態・薬物治療 13題、情報・検定 2 題が出題された。今までとは出題形式が変化している。通常は、疾患に対して治療薬を問う問題がほとんどであったが、109回ではリード文に薬剤名が記載されており、この薬剤が治療薬として使われる疾患を答える問題(問58、問62、問63)が出題されていた。
8.法規【平易】
基本的な内容を中心に出題されていた。規定や定義を穴抜きで問う問題(問 75、問76)の出題も見られ、問題形式のトレンドになっている。
9.実務【平易】
一般用医薬品に関する問題が2題(問81、問83)出題されていた。その他の問題は、既出問題の知識を用いて解答できる問題が多く、得点しやすいと考えられる。
理論問題解説
1.物理【中等】
基本的な知識問題(問91、問92、問96、問97)が出題されており、難易度は例年どおりである。計算問題(問93、問94、問98)は、文章を読み込む必要がある問題が出題され、やや解答しにくかった。光の性質(問99)など、受験生が苦手としている問題も出題された。
2.化学【中等】
例年どおり、構造から化学的性質を読み解く問題が多く出題されていたが、そのほとんどが生体分子や医薬品に関する問題(問104~106、問108)であった。また、一般用医薬品と生薬を絡めた問題(問109)が出題されていた。
3.生物【やや難】
化学・生物の連問(問110~111)、物化生・衛生・法規の連問(問120~122)があり、解きにくさを感じたと思われる。実験考察問題などの読解問題はなく、グラフや図から解答を導く問題(問112、問115、問116)が出題された。新傾向の問題として、抗酸染色に関する問題(問119)も出題された。
4.衛生【やや難】
化学物質の発がんに関する問題(問136)では、グラフから読み取る問題が出題され、知識と絡めながら解答を導かなくてはならないため、難しく感じたと思われる。過去問+αの問題が多く、正答肢を絞り切れなかったように感じた。
5.薬理【やや難】
病態・薬物治療との連問が4題出題(問154~155、問157~158、問165~166、問167~168)されたこと、初出題の薬物(問153、問159、問161)も見られことにより、難易度が上昇したと考えられる。全体を通しては、基本的な薬物の薬理作用を問う問題がほとんどであった。
6.病態・薬物治療【中等】
薬理との連問が4題出題(問154~155、問157~158、問165~166、問167~168)された。例年通り、疾病から薬剤を選択する問題や疾病の病態についての問題が出題されていた。全体として既出問題で出題されていた内容が多く、比較的得点しやすい問題が多かった。
7.薬剤【中等】
薬物動態に関しては、例年通り、グラフや計算問題が出題(問170、問172、問175、問178)されており、難易度はそれほど高くないように思える。製剤に関しては、グラフから読み取る問題(問179、問182、とい184)があり、基本事項を理解した上で解く必要があった。
8.法規【平易~中等】
一日目に法規が複合問題になるのは第107回以来。今後もこの出題形式は十分あり得る。問143については、薬機法規52条の原則から言えば選択肢1と3が正解。同法但し書きを考慮すれば1は必須ではないが、消去法で2,4,5は明らかに違っている。また問148.149続けて統計データの設問だったが、内容的には特に難しいものではなかった。
実践問題解説
1.物理【やや平易】
計算問題(問198、問203)は、公式に当てはめるだけの簡単な問題であった。また臨床につながる問題(問200、問205)など新しいカリキュラムを意識した問題があったが、全体的に平易であった。
2.化学【中等】
相互作用や薬理作用の機序を構造式を用いて問う出題(問207、問210)があった。構造を読み解く力かつ応用力を必要とした。生薬の問題(問209)では、写真から判断しなくてはならなかったため、少し解きにくさを感じたと思われる。
3.生物【中等】
図を用いた問題(問220)が出題され、薬理の知識も必要としたため、難しく感じたと思われる。それ以外の問題は、比較的得点しやすい問題が多かった印象である。
4.衛生【平易】
計算問題が 1 題(問235)出題されたが、難易度は低い。既出問題類似の出題も多くみられたため、比較的得点しやすい問題が多かった。ニュースなどで取り上げられた温泉施設におけるレジオネラ症を意識した問題(問228~229)も出題された。日頃から時事問題に関心を持つことの重要性が示された。
5.薬理【中等】
既出の薬剤に関する新規の機序に関する出題(問249、問255)があった。その他の薬剤の作用機序に関しては、既出問題でも多く見られていたため、比較的得点しやすいと考えられる。なお、乳がんに関する連問が出題された(問264~問267)。
6.病態・薬物治療【中等】
情報・検定の出題はなく、病態・薬物治療の出題が増加した。例年通り、症例と検査値から患者の疾患を推測する問題があり、例年通りの難易度である。
7.薬剤【中等】
例年通り、図、グラフ、医薬品の構造式の問題が出題され、知識と絡めながら解く必要があった。それ以外の問題は、比較的得点しやすい問題が多かった。なお、乳がんに関する連問が出題された(問264~問267)。
8.法規【中等】
例年、基本を踏まえた上での設問なので平易ではないが、難易度的には例年どおり。問306~307、問316~317、問322~323のように、副作用報告制度、副作用被害救済制度、介護保険および地域包括ケアシステムについては今後ますます薬局・薬剤師の重要度が高くなるので、必須の知識と言える。
9.実務【中等】
グラフから読み取る問題があったが、既出問題に類似(問326)していたため、容易に解けたと考えられる。例年通り、症例や検査値を用いた出題が多くみられた。