産業保健・企業内診療所で働く薬剤師:従業員の健康を支える仕事

「薬剤師=患者さんのための医療」というイメージが強いかもしれませんが、実は”従業員”を対象にした医療・健康支援の世界があります。それが、産業保健の分野であり、企業内診療所や健康管理室で働く薬剤師の仕事です。
「薬剤師 産業保健」「企業内診療所 薬剤師」「企業 薬剤師 求人」あたりのキーワードが気になっている人に向けて、この働き方のイメージを具体的にしていきます。

企業内診療所・健康管理室での仕事

企業内診療所や健康管理室では、対象が「患者さん」ではなく「自社の従業員」になります。

そこでの薬剤師の主な役割は、服薬管理や服薬状況の確認、健診結果に基づいたフォロー、保健師や産業医との情報共有です。

例えば、高血圧や糖尿病など生活習慣病を抱えた従業員が、きちんと薬を飲めているか、自己中断していないかを確認し、必要であれば受診勧奨を行います。健診結果で「要精査」「要受診」となった人に対し、「病院には行けましたか?」「お薬は続けられていますか?」と声をかけるのも大切な仕事です。

大きな企業では複数の産業保健スタッフがいて、その一員として薬剤師が動くイメージになります。

産業医・保健師とのチーム医療

産業保健の現場では、産業医、保健師、看護師、人事労務担当者など、さまざまな職種が「従業員の健康管理」に関わっています。薬剤師は、その中で「薬物療法」と「服薬状況」に特に強いメンバーです。

産業医が面談した結果を共有してもらいながら、「この治療薬なら、業務上どんな配慮が必要か」「眠気の出やすい薬なので、夜勤の多い部署の人には注意が必要」など、働き方とのバランスを考えた助言を行う場面もあります。

保健師と協力して、生活習慣病予防の健康セミナーをしたり、禁煙指導や服薬相談会を開いたりすることもあり、臨床現場とも少し違った形の”チーム医療”が展開されています。

メンタルヘルス・生活習慣病予防と薬剤師

近年の産業保健で欠かせないテーマが、メンタルヘルスと生活習慣病の予防です。

うつ病や不安障害などで通院しながら働いている従業員の中には、「薬を飲むと頭がぼんやりする」「眠気が強くて仕事がつらい」といった悩みを抱える人も少なくありません。

薬剤師は、処方内容を理解したうえで、産業医と相談しながら「業務内容の調整が必要か」「服薬タイミングをどう工夫するか」といった視点でサポートすることができます。また、生活習慣病の領域でも、血圧・血糖・脂質の管理状況を見ながら、薬だけに頼らない生活改善のポイントを一緒に考える役割があります。

「病院で治療する」の一歩手前、「病気にならないように支える」「病気とうまく付き合いながら働けるようにする」という位置づけで、薬剤師の知識が活かされます。

勤務時間・ワークライフバランスの特徴

産業保健・企業内診療所で働く薬剤師の特徴として、多くの人が口をそろえて挙げるのが「生活リズムの整いやすさ」です。基本的には会社の就業時間に合わせた勤務になるため、土日祝休み・夜勤なし・定時帰りがしやすい職場が多くなります。

残業時間も、病院の当直やドラッグストアの遅番と比べればかなり少なめで、子育てやプライベートと両立しやすい働き方を求める人には相性の良いフィールドです。ただし、大企業の本社機能などに組み込まれている場合は、社内会議やプロジェクトへの参加などで一定の残業が発生することもあります。

病院・薬局からのキャリアチェンジも多い

産業保健領域で働く薬剤師の多くは、もともと病院薬剤師や調剤薬局薬剤師として経験を積んだ人たちです。病院で生活習慣病やメンタルヘルスの患者さんを担当していくうちに、「治療だけでなく、もっと予防の段階に関わりたい」と感じて転職するケースもあります。

調剤薬局で地域の高齢者と接してきた経験も、従業員の服薬支援や生活面のアドバイスに直結します。「まずは現場で数年働き、そのあと産業保健に移る」というルートは、薬剤師のキャリアとしてかなり現実的です。

まとめ

産業保健・企業内診療所での仕事は、「患者さん」ではなく「働く人」を支え、「治療」だけでなく「予防」や「働き続けること」そのものを支える薬剤師の新しいかたちと言えます。

ワークライフバランスを大切にしながら、薬剤師としての専門性を活かしたい人にとって、一度検討してみる価値のある選択肢です。

 
監修者プロフィール

CES薬剤師国試予備校 講師

アメリカの大学・大学院を卒業後、再受験にて薬学部に入学。再試・留年はなく、ストレートで国家試験にも合格。 卒業後は薬局薬剤師を経て、現在はCES薬剤師国家試験予備校の講師。 薬剤師国家試験のゴロサイト『ゴロナビ〜薬剤師国家試験に勝つ〜』を運営中