第104回薬剤師国家試験[総評]を公開しました。

 

 

104回薬剤師国家試験

 

皆さん、こんにちは。

そして、2018年2月23日、24日に行われた第104回薬剤師国家試験を受けられた皆様、お疲れ様でした。

今回は全体的に、新傾向の問題が多く、解きにくい問題が目立ちましたね。

 

受験された方の多くはすでに自己採点などされているかと思いますが、試験の結果をふり返りたい方や、ボーダーの方、そして来年度の受験生の為にも科目別に総評をまとめてみました

 

特にこちらの記事では、各科目について必須問題、理論問題、実務問題それぞれの傾向を分析して見ましたのでご参考になさって見てください。

 

 

 

 

─ 物理 ─

  • 必須問題

難易度:やや易

物理化学1題、放射化学1題、分析化学3題からの出題でした。有効数字を理解した上でファクターを計算する問題や、イオン交換樹脂との結合力とイオンの価数の関係を問う問題などがあり、問題を丸暗記するだけでなく、しっかりと理解しておく必要を感じました。

 

 

  • 理論問題

難易度:やや難

103回と同様に、物理化学4題、分析化学5題。生体分子1題で構成されていました。全体的に基礎的な内容を問う問題が多く、過去問を中心に関連する内容を勉強しておけば、十分に点数を取れる内容だったように感じます。しかし、錯イオン体のイオン強度を求める問題やプレカラム誘導体化法とポストカラム誘導体化法の比較など新傾向の問題もあったため、今後、幅広い知識を問うような問題が増えていくと考えられます。

 

 

  • 実践問題

難易度:難

ここ最近の傾向通り、グラフから情報を読み取る問題や分析法の原理まで理解していないと解けないような問題が出題されていました。TDMで用いられる免疫測定法や血糖値測定法など他科目に関する知識も問われるような問題もあり、各科目との結びつきを理解しながら勉強していく必要を感じました。

 

 

 

─ 化学 ─

  • 必須問題

難易度:易

出題内容は例年通りに構造式を見て答えさせる問題が多く、丸暗記するだけでなく、しっかり理解しておかなければいけませんでした。さらに、今回から生薬に含まれる成分名を問う問題が新規に出題されていました。

 

 

  • 理論問題

難易度:難

例年通り、反応式や構造式を基に答えを導き出す問題が多く見られました。NMRの問題も例年のようなスペクトルから構造を導き出す問題ではなく、結合定数などより深い知識が問われていました。SN反応に関する問題も、これまでのような生成物を問う問題ではなく反応速度に関する知識も必要でした。また、生薬に関する問題では、例年のような基原や用途を聞くような問題は出ておらず、問題数も1問減っていました。

 

 

  • 実践問題

難易度:やや難

全問とも構造式を基に答えを導く問題でした。しかしながら、構造から正誤がわかる選択肢だけなく、生物などの他科目の知識がなければわからないような選択肢もあったため、構造式から情報を読み取る力、考察力、他分野に渡る知識などが求めれました。

 

 

 

─ 生物 ─

  • 必須問題

難易度:易

基本的な問題が多く、比較的解きやすかったように感じます。組織の模式図を基に答えを導く問題では耳に関する問題が始めて出題されていましたが、鼓膜の位置を求める問題だったため、多くの人が解答できたと思います。

 

 

  • 理論問題

難易度:やや難

知識を求める問題だけでなく、考察力を求められる問題が多く出題されていました。出題内容は、機能形態学3題、生化学2題、分子生物学3題、免疫学1題、微生物学1題と例年と大きく異なることはありませんでした。問題演習を充実させ、考察力を鍛えていく必要があるように感じます。

 

 

  • 実践問題

難易度:中程度

機能形態学が2題、生化学が1題、免疫学が1題。微生物学が1題とバランスの良い出題でした。誤嚥に関する問題では、図の内容をしっかり把握し考察する必要がありました。また、薬の機序やワクチンに関する知識など、他科目にも及ぶ幅広い知識が求められていました。

 

 

 

─ 衛生 ─

  • 必須問題

難易度:易

健康から5題、環境から5題と例年通りの割合で出題されています。問題内容も基礎的な問題がほとんどであり、点数が取りやすい範囲でした。ロコモティブシンドロームに関する問題が出題されており、近年の流れを汲んだ問題だったように感じます。

 

 

  • 理論問題

難易度:中程度

健康と環境の割合はバランスよく出題されています。例年通り、構造式やグラフから読取る問題が多く出題され、知識と考察力の両方が必要でした。一方、計算問題は1題もなく、問118から衛生が始まるなど、受験者を戸惑わせました。さらに、物理・化学・生物・衛生の複合問題が4題あり、最も新傾向を感じる科目の一つだったように思います。今後さらに難化していくことが予想されるため、複合問題の演習を重ねる必要があります。

 

 

  • 実践問題

難易度:中程度

健康から4題、環境から6題と前年と変わって環境に偏った出題でした。シラミ症に用いるシャンプー剤の問題が出題されており、より実践的な知識が求められていました。出題範囲としては、例年通りでした。今後、基礎的な知識を養うと共に、新傾向の問題にも対応できる力を身につける必要がより一層求められてくるでしょう。

 

 

 

─ 薬理 ─

  • 必須問題

難易度:易

過去問で頻出される薬物の作用機序を問う問題が中心で、解きやすい問題が多かったです。過去問をやり込んでいれば得点しやすかったのではないでしょうか。一方で、pD2という答えを文章から導き出す問題もあり、読解力が必要とされました。また、構造式から薬の作用点を求める問題も新たに出題されており、頻出薬物の構造は把握しておく必要があるように感じました。

 

 

  • 理論問題

難易度:中程度

頻出薬物についてのしっかりとした知識をもっていれば解答を導き出す問題が多く、比較的解きやすい傾向でした。一方で抗C 型肝炎ウイルス薬や成長ホルモン関連薬物に関する問題では新出の薬物が多く、薬物の知識をさらに広げる必要性を感じました。さらに、病態・薬物治療との連問も出題されており、疾患と薬物を連携させて勉強することが今後求められるでしょう。

 

 

  • 実践問題

難易度:やや易

頻出薬物も多く、点は取りやすかったように思います。時事を反映した、ニボルマブに関する出題がありましたが、ただ作用機序を問うのではなく、作用機序から副作用や相互作用を考察させる問題であり、深い知識と考察力が求められていることを感じました。また、インタビューフォームの情報を基に最も適切な薬物を選択させる問題もあり、臨床で求められる力を図る問題が今後増えていくと考えられます。

 

 

 

─ 薬剤 ─

  • 必須問題

難易度:易

薬物動態から8問、製剤から7問出題されています。基礎的な問題が多い一方で、静脈内定速注入した時の血中濃度推移のグラフから半減期を求めさせる問題や、日本薬局方の(1→10)の意味を問う問題など新しい傾向の問題もあり、さらに高い得点を目指すためには広い知識を習得する必要があると考えられます。

 

 

  • 理論問題

難易度:やや難

グラフや反応式を基に答えを導く問題や計算問題など思考力を問う問題が多く出題されていました。難易度は標準的なものも多かったですが、思考力とグラフの読解力の両方が求められる問題もあり、過去問の解き方を丸暗記するだけでなく、解説をしっかり理解することが今後求められるでしょう。

 

 

  • 実践問題

難易度:中程度

例年通り、薬剤師の現場を意識した問題が多く出題されました。既出の問題を勉強しておけば解けるような問題が多く、点数は取りやすかったように思います。安定した点数を取るためには多くの問題に触れ、万遍なく知識を身に付ける必要があります。

 

 

 

─ 病態・薬物治療 ─

  • 必須問題

難易度:易

基本的な疾患に関する問題が中心であり、比較的答えを導きやすかったように思います。新規の疾患である蜂窩織炎に関する問題も出題されていましたが、他の選択肢の疾患に関して十分に勉強しておけば消去法で解けたのではないでしょうか。

 

 

  • 理論問題

難易度:やや難

情報・検定の問題が103回から6→2題に減少し、一方で、薬理学との連問が3題出題されていました。基本的な疾患に関する問題が多かったのですが、ナルコレプシーに関する問題や腹痛に関する問題もあり、比較的解きにくい問題も一定数あったように感じます。基本的な疾患の問題で安定して点を取れるように知識を習得する必要があります。

 

 

  • 実践問題

難易度:中程度

情報・検定の問題が1題と理論問題同様に減少していました。検査値を読み取る問題は比較的少なかったですが、例年の傾向に基づくと怠ってはいけないところだと考えられます。RMPの概要から答えを考える問題などもあり、実践力を問う問題は今後も増えるでしょう。

 

 

 

─ 法規・制度・倫理 ─

  • 必須問題

難易度:易

例年と比べても、そう変わり映えしておらず、これまで同様に過去問を中心に勉強していれば安定して高得点を取れていたと思います。新傾向として生命倫理の四原則を問う問題がありましたが、消去法で解答できた人も多かったのではないでしょうか。今後も安定した得点源になると考えられるので、しっかり勉強しておく必要があります。

 

 

  • 理論問題

難易度:中程度

必須問題と同様に比較的点数を取りやすかった範囲だと思います。しかしながら、処方箋を基に病院薬剤師の数を求める問題など近年見られない問題もあったので、点数を取りやすいところで、取り逃すことなく、確実な得点源にしていく必要があるように感じました。

 

 

  • 実践問題

難易度:やや易

理論問題にはなかった保険関係の問題が出題されています。実践問題でも必須・理論と同様に得点しやすかったように思います。一方で、安全性情報を迅速に周知するための方法を問う問題や診断群分類制度や診療費に関する問題などが出題されており、より現場に近い知識が求められていました。また、災害時の対応に関する問題など時事を反映した問題も出題されており、視野を広げておく必要もあるように感じました。

 

 

 

─ 実務 ─

  • 必須問題

難易度:易

必須問題に初めて計算問題が導入されたり、イラストから答えを導く問題があったりと新傾向の問題が目立ちました。難易度自体は平易だったが出題範囲が広く、今後勉強がしにくくなるかもしれません。

 

 

  • 実践問題

難易度:中程度

近年の傾向通り、より実践的で思考力を問われる問題が多かったように思います。また、計算問題も7つあり、計算問題の演習を積む必要があります。今期はトラブルで1時間延期されたこともあり、2日目の3コマ目では集中力が落ちている人も多かったと思います。そのような中で単純な計算問題をミスせず解けるように集中力も養う必要があると感じました。

 

 

 

まとめ

いかがでしたか。104回は、得点率では102回と同じくらいだとは言われていますが、新傾向の問題が多く、とっつきにくい問題が多かったように感じます。また、去年よりも平均点は上昇すると言われており、来年は難化することも考えられます。

これまでのように過去問を解いたり参考書を読むだけでは解けないような問題が増えてきているため、今後は問題の傾向を把握し、対処していく必要があるでしょう。

 

104回から禁忌肢や完全相対評価の導入もあり、3月25日の合格発表まで落ち着けない人が多いと思いますが、皆様の合格をお祈りしております。