IT・ヘルステック企業での薬剤師活躍例:電子薬歴・医療アプリ・データ解析

「病院か薬局かドラッグストアか」だけで就職先を考えていると、もったいないかもしれません。ここ数年、薬剤師が IT・ヘルステック企業 に転じて活躍するケースが確実に増えています。電子カルテや電子薬歴システム、オンライン服薬指導のアプリ、医療データを扱う解析プラットフォームなど、「現場を知っている薬剤師だからこそ価値を見出せるポジション」がはっきり見えてきているからです。

電子カルテ・電子薬歴・医療系SaaSを作る側へ

IT・ヘルステック企業では、電子カルテや電子薬歴、レセコン一体型システム、オンライン診療・オンライン服薬指導システムなど、医療現場で使われるソフトウェア(SaaS)を開発しています。

そのときに必ず必要になるのが、「現場で本当に使える画面」「薬剤師や医師がストレスなく操作できる動線」を設計する視点です。

薬剤師として調剤室でどんな動きをしているか、処方チェックのときに何を見ているか、薬歴には何を残しておきたいか──こうした具体的な感覚を持っている人材は、システム開発の場で非常に重宝されます。設計会議で「このワンクリック、現場だと地味に負担です」「その項目は、このタイミングで出てきてほしいです」とリアルなコメントができるのは、現場経験のある薬剤師ならではです。

プロダクトマネージャーやCSでの活躍

IT企業で薬剤師が担うポジションとして増えているのが、プロダクトマネージャー(PM) や カスタマーサクセス(CS) です。

PMは「どんな機能を、どんな順番で作るか」を決める役割で、エンジニアやデザイナーと一緒にプロダクトの方向性を考えます。医療現場のワークフローを理解している薬剤師がPMに入ると、「現場で本当に役に立つ優先順位」を判断しやすくなり、医療者から信頼されるプロダクトを作りやすくなります。

カスタマーサクセスは、導入してくれた薬局・病院・クリニックがシステムをきちんと使いこなせるようにサポートする役割です。操作方法の説明だけでなく、「この設定だと業務フロー的に大変ですよ」「こういう使い方をすると算定漏れが減ります」といった、業務に踏み込んだ提案ができるのが薬剤師CSの強みです。導入研修や、現場からのフィードバックを開発チームに届ける橋渡し役としても機能します。

データ解析・RWD活用と薬剤師

ヘルステックの世界では、電子カルテ・レセプト・薬歴・ウェアラブル端末などから集まるデータを使う リアルワールドデータ(RWD)解析 が注目されています。

「実際に現場で、この薬はどう使われているのか」「どの疾患でどんな併用が多いのか」「どのタイミングで副作用が出やすいのか」といった問いに対し、統計解析や機械学習を使って答えを出していく仕事です。

ここでも、薬剤師としての知識があるかどうかで、データの読み方は大きく変わります。単なる数字の集まりではなく、「この併用は添付文書上問題ないけれど、実臨床では注意が必要」「この年齢層で使うのは現場感覚的に少し違和感がある」といった「違和感」を見つけられるのは、薬の使われ方を肌で知っている人ならではです。

統計ソフトやPythonなどのツールを覚えれば、薬学のバックグラウンドを持ちながらデータサイエンスの領域で活躍することも十分可能になってきています。

プログラミングができる薬剤師は、かなり強い

必須ではありませんが、プログラミングスキル を持っている薬剤師は、IT・ヘルステックの世界ではかなり重宝されます。

エンジニアレベルでガリガリ書けなくても、SQLでデータを引き出したり、Pythonで簡単な集計や可視化ができたりするだけで、開発チームとの会話が一気にスムーズになります。

「コードが少し読める薬剤師」「仕様書を理解して、現場視点でコメントできる薬剤師」は、プロダクトの質を一段階押し上げる存在として評価されやすくなります。臨床+ITの”二刀流”を目指したい人には、かなり相性の良いフィールドです。

臨床現場からIT企業へ、よくある転職パターン

実際の転職パターンとして多いのは、まず病院や薬局で数年働き、その後「自分がいつも使っているシステムの会社」や「医療IT企業」に興味を持つ、という流れです。

たとえば、電子薬歴がとても使いやすかった薬局で働いていた薬剤師が、「この会社面白そうだな」と調べて、中途採用でCSや導入担当として入社するケースがあります。病院薬剤師から、電子カルテベンダーの医療コンサルポジションに移る人もいます。

最近では、新卒からIT・ヘルステック企業に入る薬剤師も出てきていますが、「まずは現場を数年経験してからIT側へ」というルートの方が、プロダクトづくりやサポートの場面で説得力を出しやすいのは確かです。

最後に

IT・ヘルステック企業で働く薬剤師は、「薬を扱う人」から「医療の仕組みそのものをアップデートする人」へと役割をシフトするイメージに近いかもしれません。

人と医療がテクノロジーでつながっていくこの領域は、「薬剤師だけど、ITも好き」というタイプには一度真剣に検討してほしいキャリアです。

 
監修者プロフィール

CES薬剤師国試予備校 講師

アメリカの大学・大学院を卒業後、再受験にて薬学部に入学。再試・留年はなく、ストレートで国家試験にも合格。 卒業後は薬局薬剤師を経て、現在はCES薬剤師国家試験予備校の講師。 薬剤師国家試験のゴロサイト『ゴロナビ〜薬剤師国家試験に勝つ〜』を運営中