研究者・アカデミアとしての道:大学・研究機関で薬剤師資格を活かす

「薬剤師 = 臨床の現場」というイメージが強い一方で、大学や研究機関で”研究者・教員”として活躍している薬剤師も少なくありません。

薬を使う側ではなく、薬を「生み出す」「評価する」「教える」側に回る道──それが、アカデミアや研究職のキャリアです。

「薬剤師 研究職」「薬学部 教員 なるには」「博士課程 薬剤師」などを検索し始めた薬学生に向けて、このルートの全体像を整理してみます。

大学・大学院・研究所での仕事って何をする?

大学や大学院、研究所で働く薬剤師の仕事は、大きく分けると「研究」と「教育」です。

大学教員であれば、平日は実験・データ解析・論文執筆・学会準備といった研究活動に加えて、学生向けの講義や実習指導、ゼミ、卒論・修論の指導などを行います。

研究所や企業研究所に所属する場合は、教育の比重がほとんどなくなり、ほぼフルタイムで研究になります。その代わり、論文や成果を出すプレッシャーは大学以上に強いこともあります。

いずれにせよ、「自分で問いを立てて、それを実験や調査で確かめ、世界に向けて発信していく」というのが、研究者としての日常です。

博士課程はほぼ必須。キャリアの流れ

アカデミアを目指すなら、博士課程への進学はほぼ前提と考えておいた方がいいです。

一般的な流れは、

修士課程 → 博士課程 → ポスドク(任期付き研究員) → 助教・講師 → 准教授・教授

といったイメージになります。

博士課程では、自分の研究テーマを深堀りして、国際誌に論文を出したり、学会で発表したりしながら「この分野の専門家」として認められていく過程を歩みます。博士号取得後は、国内外の大学や研究機関でポスドクとして研究を続けながら、教員公募に応募していく、というケースが多くなります。

ハードルが高く感じられるかもしれませんが、「研究が好き」「自分でテーマを追いかけるのが楽しい」と感じる人にとっては、非常にやりがいの大きい道です。

研究テーマはどう決める?

薬学の研究テーマはとても幅広く、創薬、製剤、臨床薬理、薬物動態、薬剤疫学、医療経済、薬学教育など、方向性によって日々の生活もだいぶ変わります。

基礎寄りの創薬研究なら、分子設計・合成・in vitro 実験・動物実験などを通して、まさに「新しい薬の種」を見つけていく仕事になります。製剤や薬物動態であれば、薬が体の中でどう動き、どう効き、どう代謝されるのかを検証し、より良い製剤設計や投与設計につなげていきます。

臨床薬理や薬剤疫学では、実際の患者データや大規模データを扱い、「現場で薬はどう使われているか」「どんな副作用がどれくらい起きているか」を統計的に解析します。薬学教育の分野を選べば、「どう教えれば良い薬剤師が育つのか」という視点で教育方法やカリキュラムを研究することもできます。

テーマ選びは、「何が就職に有利か」だけでなく、「自分が何を面白いと思うか」「10年追いかけても飽きないか」を基準に考えることがとても大切です。

論文・学会発表が”通貨”になる世界

研究職・大学教員の採用では、履歴書だけでなく、「これまでどんな研究をして、どんな論文を出したか」「学会でどんな発表をしてきたか」が、ほぼ”通貨”のように扱われます。

査読付き論文(特に英語論文)の数と質、国際学会での口頭発表やシンポジウム登壇、科研費など外部研究費の獲得実績などは、採用審査で重視されるポイントです。

逆に言えば、大学院生のうちから、指導教員と一緒に「どこに論文を出すか」「どの学会で発表するか」を意識して動いていくことが、将来の就職活動そのものにつながっていきます。

研究の世界では、「何を考え、何をやり、それをどうアウトプットしたか」が、そのまま自分の”実績”として積み上がっていく、とイメージしておくと分かりやすいかもしれません。

臨床経験を持つ薬剤師研究者の価値

薬剤師として病院や薬局で働いた経験を持つ研究者は、アカデミアの中でも独自の価値を発揮できます。

たとえば、臨床経験を踏まえて研究テーマを設定すると、「現場で本当に困っていること」を起点に研究を組み立てやすくなります。薬剤師目線で、「この副作用が多い」「この投与スケジュールは現場では回しづらい」といった実感を持っていると、研究の問いも具体的になりやすくなります。

また、臨床側との共同研究を進めるときにも、「病棟や薬局のリアル」を理解していると、医師・看護師・薬剤師とのコミュニケーションがスムーズになり、研究が動きやすくなります。臨床研究・実臨床データを扱う分野では、こうした”二つの世界を知っている人材”は特に重宝されます。

最後に

研究者・アカデミアの道は、決して楽なルートではありませんが、「薬学をもっと深く学びたい」「自分の問いを、自分の手で追いかけてみたい」と感じる薬学生にとって、とても魅力的な選択肢です。

臨床に出るか、研究に進むかで迷っているなら、まずは大学院の先生や先輩研究者に話を聞きに行ってみるのがおすすめです。実際の生活や働き方を聞くと、自分のイメージがぐっと具体的になります。

 
監修者プロフィール

CES薬剤師国試予備校 講師

アメリカの大学・大学院を卒業後、再受験にて薬学部に入学。再試・留年はなく、ストレートで国家試験にも合格。 卒業後は薬局薬剤師を経て、現在はCES薬剤師国家試験予備校の講師。 薬剤師国家試験のゴロサイト『ゴロナビ〜薬剤師国家試験に勝つ〜』を運営中