【2024年版】第110回薬剤師国家試験 新薬の完全攻略|109回出題実績&最新予想
いよいよ国家試験まで2ヶ月ほどとなりました。現役生は卒業試験の真っ只中、既卒生は薬剤師国家試験に向けてラストスパートをかけている頃でしょう。
さて、今回は110回薬剤師国家試験に向けて出題される可能性の高い新薬について紹介していきたいと思います。まずは、前年の109回薬剤師国家試験で出題された新薬について作用機序も含め紹介していきます。前年に出題されたので、引き続き110回でも出題の可能性は高いです。
第109回国試で出題された重要新薬
①リオシグアト(109-31)
血管平滑筋において内因性一酸化窒素(NO)に対する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の感受性を高める作用とNO非依存的に直接sGCを刺激する作用により、cGMPの産生を促進することで血管拡張作用を示す。
②ウメクリジウム(109-34)
長時間作用型の抗コリン薬であり、気管支平滑筋に存在するM₃受容体へのアセチルコリンの結合を競合的に阻害することにより気管支平滑筋収縮を抑制する。
③ロミタピド(109-36)
小胞体内腔に存在するミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)に直接結合して脂質転送を阻害することにより、肝臓細胞及び小腸細胞内においてトリグリセリドとアポBを含むリポタンパク質の会合を阻害する。その結果、肝臓細胞でのVLDLや小腸細胞でのキロミクロンの形成を阻害する。VLDLの形成が阻害されるとVLDL の肝臓からの分泌が低下し、血漿中LDL-C濃度が低下する。
④ブロダルマブ(109-38)
抗IL-17受容体A(IL-17RA)に対するモノクローナル抗体であり、IL-17RAに選択的に結合し、炎症性サイトカインである IL-17A、IL-17F、IL-17A/Fヘテロ二量体、IL-25(別名IL-17E)及びIL-17CのIL-17RAを介したシグナル伝達を阻害するため、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬に用いられる。
⑤アプレミラスト(109-38)
ホスホジエステラーゼ(PDE)Ⅳ阻害剤で、主に炎症性細胞に分布しているPDEⅣを阻害することにより細胞内cAMP濃度を上昇させる。その結果、IL-17、TNF-α、IL-23及び他の炎症性サイトカインの発現を制御することにより炎症反応を抑制する。
⑥スガマデクス(109-152)
血漿中で筋弛緩剤のロクロニウム臭化物又はベクロニウム臭化物と包接体を形成し、神経筋接合部のニコチン受容体と結合可能な筋弛緩剤の濃度を減少させ、ロクロニウム臭化物又はベクロニウム臭化物による筋弛緩作用を阻害する。
⑦エレヌマブ(109-153)
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体に直接作用するヒトIgG2モノクローナル抗体であり、内因性のCGRPのCGRP受容体への結合を防ぐことにより、片頭痛発作の発現に関与するとされるCGRP受容体シグナルの伝達を阻害する。
⑧ベリムマブ(109-158)
完全ヒト型抗Bリンパ球刺激因子(BLyS)モノクローナル抗体製剤で、BLySはB細胞のアポトーシスを抑制し、形質細胞への分化を促進させる蛋白質であり、SLE治療に用いられる。
⑨イバブラジン(109-159)
HCN(過分極活性化環状ヌクレオチド依存性)チャネル遮断薬であり、洞結節のペースメーカー電流Ifを構成するHCN4チャネルを阻害し、活動電位の拡張期脱分極相における立ち上がり時間を遅延させ、心拍数を減少させる。
⑩ダプロデュスタット(109-161)
低酸素誘導因子(HIF)プロリン水酸化酵素を阻害することにより、転写因子であるHIFαを安定化させる結果、HIF応答性であるエリスロポエチン遺伝子の転写を促進させることによって赤血球産生を誘導する。
⑪ドチヌラド(109-164)
腎臓における尿酸の再吸収に関与するトランスポーターであるURAT1を選択的に阻害することにより、糸球体でろ過された尿酸の尿中排泄を促進し、血中尿酸値を低下させる。
⑫フルダラビン(109-169)
DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼなどを阻害し、DNA及びRNA合成並びにDNA修復を阻害することにより増殖細胞及び静止細胞のいずれにも抗腫瘍効果を発揮する。
⑬アファチニブ(109-169)
野生型及び遺伝子変異を有するEGFR(ErbB1)だけではなく、HER2(ErbB2)及びHER4(ErbB4)のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害し、腫瘍細胞の増殖を抑制する。
⑭サクビトリル バルサルタン(109-221)
サクビトリル及びバルサルタンに解離して、それぞれネプリライシン(NEP)及びアンジオテンシンⅡタイプ1(AT1)受容体を阻害する。NEP阻害は、血管拡張作用、利尿作用、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA)抑制作用、交感神経抑制作用、心肥大抑制作用、抗線維化作用、及びアルドステロン分泌抑制作用を有するナトリウム利尿ペプチドの作用を亢進する。バルサルタンのAT1受容体拮抗作用は、血管収縮、腎ナトリウム・体液貯留、心筋肥大、及び心血管リモデリング異常に対する抑制作用をもたらす。
⑮レナリドミド(109-252)
サイトカイン産生調節作用、造血器腫瘍細胞に対する増殖抑制作用、血管新生阻害作用を有すると考えられるが、詳細な作用機序は解明されていない。
⑯ベドリズマブ(109-259)
メモリーTリンパ球表面に発現するα4β7インテグリンに特異的に結合し、α4β7インテグリンと主に消化管に発現するMAdCAM-1との結合を阻害することで、リンパ球の腸管粘膜への浸潤を阻害する。
⑰ウステキヌマブ(109-259)
ヒトインターロイキン(IL)-12及びIL-23を構成するp40たん白サブユニットに特異的かつ高い親和性で結合し、IL-12及びIL-23受容体複合体への結合を阻害する。
⑱オミデネパグ(109-263)
プロスタノイドEP2受容体刺激作用により、線維柱帯流出路及びぶどう膜強膜流出路を介した房水流出を促進する。
⑲セマグルチド錠(109-297)
本内因性GLP-1が標的とするGLP-1受容体と選択的に結合し、cAMP放出量を増加させるGLP-1受容体作動薬として作用する。
⑳ジルコニウムシクロケイ酸Na水和物(109-339)
カリウムイオンを選択的に捕捉して水素イオン及びナトリウムイオンと交換する。カリウムを捕捉して糞中に排泄させ、消化管内腔における遊離カリウム濃度を低下させることにより、血清カリウム濃度を低下させ高カリウム血症の改善をもたらす。
第110回国試の出題予想新薬
①レカネマブ(109回155に作用機序が出題)
ヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、可溶性アミロイドβ凝集体(プロトフィブリル)に選択的に結合するが、アミロイド斑の主要構成成分である不溶性アミロイドβ凝集体(フィブリル)にも結合性を示す。ミクログリア細胞によるFc受容体を介したアミロイドβの食作用を促進したことから、ミクログリア細胞による食作用の活性化が脳内アミロイドβの減少作用に寄与する。
②エンシトレルビル
SARS-CoV-23CLプロテアーゼを阻害し、ポリタンパク質の切断を阻止することで、ウイルスの複製を抑制する。
③ラスミジタン
5-HT1F受容体に高い親和性と選択性を示す作動薬であり、三叉神経を含む痛経路を抑制することによって、ニューロペプチド放出を減少させ、片頭痛に対する治療効果を示す。
④チルゼパチド
GIP受容体及びGLP-1受容体のアゴニストであり、両受容体に結合して活性化することで、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進させる。
⑤ガルカネズマブ
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体であり、CGRP受容体を阻害することなくCGRPの生理活性を阻害する。
⑥フレマネズマブ
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に結合し、2つのアイソフォーム(α-及びβ-CGRP)のCGRP受容体への結合を阻害するヒト化モノクローナル抗体である。
学習のポイント
薬物名と作用機序、さらにはその使い方に関しても電子添文や教科書を再度確認しておきましょう。まだまだ時間はありますので、どんな薬が出題されても対応できるように、薬の作用機序をしっかりと確認しておきましょう。 ※作用機序は電子添文を参照しています。
著者プロフィール
CES薬剤師国試予備校 講師
アメリカの大学・大学院を卒業後、再受験にて薬学部に入学。再試・留年はなく、ストレートで国家試験にも合格。 卒業後は薬局薬剤師を経て、現在はCES薬剤師国家試験予備校の講師。 薬剤師国家試験のゴロサイト『ゴロナビ〜薬剤師国家試験に勝つ〜』を運営中