第110回薬剤師国家試験「衛生」分野の傾向と解説 | 出題の特徴と第111回に向けた対策
第110回薬剤師国家試験「衛生」分野の傾向と解説
「衛生」問題の最新の出題傾向を分析し、第111回に向けた効果的な対策法を解説します。
「衛生」における出題傾向
「衛生」問題に関する出題傾向について、特に注目すべき点は以下の通りです:
- 時事問題を意識した応用問題の増加
- 例年に比べやや難化
- 過去に出題されたことが少ない問題の増加
第110回薬剤師国家試験の衛生分野では、時事問題を反映した出題が見られました。
例えば、紅麴サプリメント問題を意識したと思われる、コウジカビ Aspergillus flavus が産生する肝発がん物質に関する問題が出題されました。
全体的な難易度は例年に比べやや難化傾向にありました。
特筆すべき点として、久しく出題されていなかった逆転層に関する問題が出題されたことや、過去問での出題が少なかった中毒原因物質のスクリーニング法に関する問題が含まれていたことが挙げられます。
これらの点から、受験生にとっては難しく感じられた可能性があります。
では、第110回で実際に出題された問題を詳しく見ていきましょう。
第110回薬剤師国家試験「衛生」分野の傾向
ここでは、第110回試験の「衛生」分野における感染症や食品に関する時事問題など、最新の動向を見ていきます。
必須問題の出題例
- 沈降性逆転層
- 地形性逆転層
- 放射性逆転層
- 移流性逆転層
- 前線性逆転層
地形性逆転層は、冷たく重い空気が斜面に沿って盆地や谷間に流れ込み生じる。
他の選択肢については:
- 【選択肢1】:沈降性逆転層は、高気圧圏内では沈降性の気流が存在するため、空気が沈降し断熱圧縮により気温が上昇し発生する。地表付近の対流活動により下降気流は地上まで到達できないため、逆転層の下限は1,000m前後であることが多い。
- 【選択肢3】:放射性逆転層は、夜間の放射冷却によって地表面付近の空気が上空よりも早く冷やされて発生する。特に冬季、晴天の夜間(日没後)、地上200m以下、風速3m/sec以下で生じやすい。
- 【選択肢4】:移流性逆転層は、暖かい空気が冷たい空気の上にはい上がり(暖気移流)冷たい空気との間にできるものと、暖かい空気の下に冷たい空気が潜り込んで(寒気移流)でできるものとがある。前線性逆転層もこの分類に入る。
- 【選択肢5】:前線性逆転層は、寒気団が暖気団の下に入り込み生じる。
理論問題の出題例
中毒原因物質はフェノバルビタールであり、その試験方法は銅-ピリジン法である。
中毒原因物質はΔ⁹-テトラヒドロカンナビノールであり、その検査試薬はデュケノア試薬である。
デュケノア試薬は、大麻の確認・鑑定に最も広く用いられている定性試験法の試薬である。
カンナビノイドがデュケノア試薬と鉱酸(濃塩酸)の存在下に縮合し、呈色するものである。
他の選択肢については:
- 【選択肢1】:中毒原因物質はメタンフェタミンであり、その試験方法はシモン反応である。シモン反応は脂肪族第二級アミンの呈色反応であり、メタンフェタミンなどの検出に用いられる。ピリジン・ピラゾロン法は、シアン化物イオンの定量法である。
- 【選択肢2】:中毒原因物質はモルヒネであり、その試験方法はアルカロイド試薬と反応するマルキス反応やFeCl₃反応などがある。クロモトロープ酸はメタノールやホルムアルデヒドなどを測定する方法である。硫酸酸性溶液中でホルムアルデヒドは、クロモトロープ酸と反応して紫色の色素を形成し、これを光学的に測定する。
- 【選択肢4】:中毒原因物質はアセトアミノフェンであり、その試験方法はインドフェノール法である。ラインシュ法は無機金属の予試験として利用される方法であり、検液をHCl 酸性として銅片又は銅コイルを入れると、検査試料中の無機金属を銅表面に付着させるため、表面が灰~黒色に変色する。この方法によって ヒ素(As)、水銀(Hg)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)が検出できる。
実践問題の出題例
- 感染症法(注)においてSFTSが含まれる四類感染症は、全数報告対象とされている。
- 原虫によって引き起こされる感染症である。
- ダニが媒介する感染症である。
- SFTSに対するワクチンがある。
- 感染者との接触及び血液を介した感染のおそれはない。
(注)感染症法:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は四類感染症に含まれ、四類感染症は全数把握対象である。
主に病原体が寄生したマダニにかまれること、もしくは、マダニにかまれて感染した動物(野生、屋外で飼育されている動物)の体液などにより感染する。
他の選択肢については:
- 【選択肢2】:SFTSウイルスによって引き起こされる感染症である。
- 【選択肢4】:SFTSの特異的な治療法やワクチンはない。
- 【選択肢5】:感染患者の血液、体液との接触感染も報告されている。
第111回薬剤師国家試験に向けた対策
第110回薬剤師国家試験の衛生分野では、時事問題の感染症や食品からの出題が見られ、最新の動向を取り入れた出題になっている印象でした。第111回に向けて効果的な対策を立てるためには、以下のポイントを押さえましょう。
対策ポイント | 具体的方法 |
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過去問の徹底分析 | 過去7年分の問題をしっかりと解き、基本事項の理解を深める |
時事情報の収集 | 感染症や食品衛生に関する最新情報を定期的にチェックする |
幅広い知識の習得 | 基本事項だけでなく、関連する深い知識も身につける |
アウトプット強化 | 模擬試験などを活用し、インプットとアウトプットを繰り返す |
応用力の向上 | 複数の分野をまたぐ問題にも対応できるよう総合的な理解を深める |
特に重要なのは、時事情報と基礎知識の連携です。最新の衛生問題が基礎的な原理とどのように結びついているかを体系的に整理しておきましょう。
CES薬剤師国試予備校 講師
アメリカの大学・大学院を卒業後、再受験にて薬学部に入学。再試・留年はなく、ストレートで国家試験にも合格。 卒業後は薬局薬剤師を経て、現在はCES薬剤師国家試験予備校の講師。 薬剤師国家試験のゴロサイト『ゴロナビ〜薬剤師国家試験に勝つ〜』を運営中