【2025年】第110回薬剤師国家試験「病態薬物治療」の総評と111回対策

「病態・薬物治療分野」の傾向と第111回へ向けた対策

最新の出題傾向を分析し、第111回薬剤師国家試験へ向けた対策をご紹介します。

「病態・薬物治療分野」における出題傾向

 

「病態・薬物治療分野」問題に関する出題傾向について、特に注目すべき点は以下の通りです:

 

 

必須:やや難

疾患名から適応のある薬剤を選ぶ問題が出題されています。

主な疾患の症状や抗体名、検査値の動きを問う問題も出題されています。

初出題の疾患名もありましたが、消去法で解答できるものでした。

理論:例年通り

症例から疾患名を導き、更に適応薬剤を選ぶ問題が出題されました。

必須と同様に、主な疾患の症状や検査値の動きを問う問題も出題されています。

また、適応がある薬剤の中でも第一選択薬を選ぶ問題もありました。

薬理との連問は3題でした。(問156・157、問162・163、問165・166)

情報・検定から2題出題されました。(問193・問194)

実践:例年通り

症例や検査値から患者に何が起こっているのかを把握し、適切な治療薬はを選ぶ問題やその疾患の周辺知識を必要とする問題が出題されました。

妊婦に関する問題が出題されており、妊婦に使用できる薬剤の知識が必要でした。(問294・問296)

実臨床で必要な知識を確認する問題が出題されています。

 

ここからは実際の出題例をご紹介していきます。

第110回薬剤師国家試験「病態・薬物治療分野」分野の傾向

第110回薬剤師国家試験の「病態・薬物治療」分野では、症例をもとに適切な治療薬を選ぶ問題や、疾患ごとの検査値の動きを問う問題が例年通り出題されました。

一方で、新規の疾患に関する出題もありましたが、消去法を用いることで解答可能な設問が多く、基本的な知識をしっかりと身につけていることが重要でした。

必須問題の出題例

問64 

シクロスポリン点眼液が使用される眼疾患はどれか。1つ選べ。

  1. 白内障
  2. 春季カタル
  3. 感染性角膜炎
  4. 加齢黄斑変性
  5. 緑内障
【解答】2

「シクロスポリン点眼液」「春季カタル」いずれも初出題でした。

受験生の中には驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、消去法で解答可能です。

他の選択肢の治療薬を確認していきましょう。

 

他の選択肢については:

  • 【選択肢1】:白内障 ⇒ピレノキシン・チオプロニン等
  • 【選択肢3】:感染性角膜炎 ⇒原因に合わせて抗菌薬/抗ウイルス薬/抗真菌薬
  • 【選択肢4】:加齢黄斑変性 ⇒ラニビズマブ・アフリベルセプト等
  • 【選択肢5】:緑内障 ⇒眼圧を降下する薬剤

 

また上記疾患は、病態から考えても免疫抑制剤は使用しません。

 

春季カタルについても少し触れておきます。

〈春季カタル〉

重症アレルギー性結膜疾患

症状:強い目のかゆみ、充血、涙、分泌物を伴う

治療薬:抗アレルギー薬・ステロイド・免疫抑制剤

理論問題の出題例

問186 

17歳男性。

14歳時、起床時に右肩がぴくついた後、意識が消失した。

病院において脳波検査で異常が指摘され、てんかんと診断された。バルプロ酸ナトリウムによる治療が開始され、問題なく経過していた。

今回、全般性強直間代発作が出現し、重積状態になったため緊急搬送された。

20分ほどけいれん発作が持続している。

本患者のけいれん抑制のために最初に静脈内投与される薬物として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. メタンフェタミン
  2. ジアゼパム
  3. プロポフォール
  4. ロラゼパム
  5. フェノバルビタール
【解答】2、4

本患者は全般性強直間代発作の中でもてんかん重積発作を起こしています。

てんかん重積発作の第一選択薬はジアゼパムやロラゼパム、ミタゾラムです。

他の選択肢についても確認しておきましょう。

 

他の選択肢については:

  • 【選択肢1】:メタンフェタミン ⇒間接型アドレナリン作動薬 適応:ナルコレプシー等
  • 【選択肢3】:プロポフォール ⇒静脈麻酔薬 小児禁忌
  • 【選択肢5】:フェノバルビタール ⇒強直間代発作・部分発作への適応はあるが、てんかん重積症の第一選択薬にはなっていない。第一選択薬で効果不十分例に投与することは可能。

実践問題の出題例

問294-295 

29歳女性。

既婚。

3年前に夫をドナーとした生体腎移植(ABO血液型適合)を受け、拒絶反応を抑制するため免疫抑制薬を以下の処方で服用しながら、生活をしている。

腎移植後、体調がよくなり生活も安定してきたので、子供を欲しいと思うようになった。

 

(処方)

シクロスポリンカプセル25㎎

  • 1回3カプセル(1日6カプセル)
  • 1日2回 朝夕食後 28日分

問294 (病態・薬物治療)

患者の希望を考慮すると、今後の免疫抑制薬として選択可能なのはどれか。2つ選べ。

  1. シクロスポリン
  2. タクロリムス
  3. バシリキシマブ
  4. ミゾビリン
  5. エベロリムス

問295 (実務)  

1年後、この患者は妊娠したが、妊娠第25週目になって血圧の上昇(154/112mmHg)がみられたため入院し、降圧療法を行うこととなった。

なお、入院時の血液検査結果は以下の通りである。

 

(検査値)

  • BUN 18mg/dL
  • 血清クレアチニン0.7mg/dL
  • eGFR 80mL/min/1.73m²
  • Na 143mEq/L、
  • K 5.2mEq
  • Cl 105mEq/L

 

  1. アテノロール
  2. エナラプリルマレイン酸塩
  3. エサキセレノン
  4. バルサルタン
  5. ニフェジピン
【解答】問294 1、2

今回は、

  • 妊娠希望患者に投与可能
  • 腎移植後の拒絶反応へ適応のある薬剤

上記2点を満たす薬剤を選ぶ問題でした。

 

解答は、1:シクロスポリン、2:タクロリムスです。

 

他の選択肢は以下の通りでした。いずれの薬剤も妊婦禁忌です。:

  • 【選択肢3】:バシリキシマブ ⇒抗CD25ヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体。適応:腎移植後の急性拒絶反応
  • 【選択肢4】:ミゾリビン ⇒核酸合成阻害薬。適応:腎移植における拒否反応の抑制
  • 【選択肢5】:エベロリムス ⇒mTOR阻害薬。移植後拒絶反応への適応なし
【解答】問295 1、5

検査値よりK 5.2mEq(正常値:3.5~5.0mEq/L)とKがやや高値になっていることがわかります。

他はすべて正常範囲内です。 主な血液検査の正常値を覚えておく必要があります。

 

今回は、

  • 妊娠第25週目の患者に投与可能
  • 降圧薬
  • 高K血症をきたさない

上記3点を満たす薬剤を選ぶ問題でした。

 

解答は、1:アテノロール、5:ニフェジピンです。

 

他の選択肢は以下の通りでした。:

  • 【選択肢2】:エナラプリルマレイン酸塩 ⇒ACE阻害薬 妊婦禁忌
  • 【選択肢3】:エサキセレノン ⇒K保持性利尿薬 高K血症リスクあり
  • 【選択肢4】:バルサルタン ⇒AT₁受容体遮断薬 妊婦禁忌

第111回薬剤師国家試験に向けた対策

第111回試験に向けて、以下のポイントを押さえた学習が重要です。

対策ポイント 具体的方法
過去問の分析 過去5~7年分の問題を最低でも3回は解き、出題傾向をつかみましょう。
主な疾患に関する知識の習得 主な疾患の症状・抗体名・検査値の動き・治療薬とその副作用をきちんと整理しましょう。薬理や実務と一緒に勉強すると効率的です。
主な検査数値の把握 疾患名を導くために、まずは正常値を覚えましょう。
肝機能・腎機能障害や妊婦への投与可能な薬剤を把握 治療薬を選ぶ問題で必要な知識となります。オンライン上で添付文書を確認する等、ひと手間をかけると記憶の定着につながります。
最新の医療知識やガイドラインの理解 患者の状況を把握し、使える薬剤が複数ある中で、第一選択薬は何か、第一優先事項は何かを選ぶことが求められます。
模擬試験の活用 知識の定着や時間内に解くトレーニングになります。また、自身の知識をフル活用して選択肢を絞る作業、知らない情報が含まれていても消去法で解答を導く作業に慣れておく必要があります。

薬剤師国家試験は近年、難化しており、丸暗記だけでは合格が難しくなっています。しかしながら、内容をきちんと理解していれば、新傾向問題の出題があったとしても、合格点に到達できるようになっています。病態・薬物治療学分野は、現場に出てからも役立つ知識がたくさんあります。ぜひ、患者さんに喜んでいただける薬剤師を目指していただけると嬉しいです。

 


 

◯I先生