【2025】第110回薬剤師国家試験の総評|難易度分析と前回比較

厚生労働省 | 第110回薬剤師国家試験の施行

総合

第110回薬剤師国家試験の全体としての難易度は、109回と比較すると【やや易】と考えられるが、第109回を【やや難】と位置付けると、通常通りの難易度に戻ったと言える。

必須問題

衛生、薬剤では図やグラフの問題が出題されたが、109回と比較すると難易度はあまり変わらないと考えられる。

どの科目も基本的事項に関する出題が多く見られた。

必須問題全体としては得点しやすい問題が多く、109回と比較すると【中等】であったと考えられる。

理論問題

理論問題全体としての難易度は、【中等】であった。

物化生・衛生の連問(問120~121)が1題、薬理・病態・薬物治療の連問が3題出題(問156~157、問162~163、問165~166)出題され、109回と比べると連問が同程度の出題であった。

理論問題全体として、科目間の繋がりを考えさせる問題が継続して出題されている印象である。

実践問題

実践問題は、例年通り薬理や病態・薬物治療との繋がりを意識する複合的な問題があったが、リード文より検査値や患者背景など問題を解くためのヒントが多かったため、109回と比較すると【やや易】と感じる難易度であった。

吸入器や皮下注ペンなどの剤形の使用法の説明や血糖測定器などの医療機器の使い方、正しい手袋の脱着など現場において必要とされる知識の問題が見られた。

必須問題解説

1.物理【平易

グラフから読み取る問題の出題はなかった。

ただし、計算問題(問1、問5)があったため、少し難しく感じたかもしれない。

公式や定義を覚えていれば、解答できる問題がほとんどであった。

 

2.化学【平易

グラフから読み取る問題や生薬の問題の出題はなかった。

基本事項に関する問題がほとんどであったため、解きやすさを感じたと思われる。

 

3.生物【平易

構造から判断させる問題の出題(問12)があったが、基本事項に関する問題がほとんどであった。

 

4.衛生【中等】

グラフや構造式を使った問題が2題(問16、問23)みられ、解きにくいと感じたかもしれない。

久しく出題されていなかった逆転層に関する問題(問25)が出題されていた。

 

5.薬理【平易

例年通り、ほとんどが既出薬物の標的分子や作用機序を中心に出題され、得点しやすいと考えられる。

グラフを使った問題が1題(問26)見られたが、基本的な問題であったため難易度は高くなかった。

 

6.薬剤【中等】

基本的な内容が多く出されていた。

図を使った問題が4題(問41、問45、問51、問53)、計算問題(問47)が1題出題されていた。

計算問題に関して難易度は高くなかった。

 

7.病態・薬物治療【中等】

病態・薬物治療 14題、情報・検定 1 題が出題された。

初出題の疾患名(問58、問64)があったが、消去法で解答を導くことができる問題であった。

 

8.法規・制度・倫理【平易

基本的な内容を中心に出題されていた。

例年通り、規定や定義を穴抜きで問う問題(問 72、問78)の出題が見られた。

 

9.実務【平易

一般用医薬品に関する問題が1 題(問81)出題されていた。

その他の問題は、既出問題の知識を用いて解答できる問題が多く、得点しやすいと考えられる。

理論問題解説

1.物理【 中等】

全体的に前年度と変わらない難易度であった。

計算量の多い計算問題(問96,問97)が2問続いた。

ボルツマン分布の問題(問93)が,今までにないグラフで出題されたため,戸惑った受験生もいたと思われる。

分析については,例年よりやや平易だった。

 

2.化学【やや平易

官能基による分離法(問101)が出題されたが,高校の化学で解答できるほど平易であった。
ブレオマイシンA2(問106)や,インスリンの構造(問107)などの医薬品化学の問題が出題されたが,解答するのはそれほど難しくないと思われる。

電子移動の矢印の正誤問題が,去年に引き続き出題された。

 

3.生物【やや難

物化生・衛生の連問(問120~121)があり、解きにくさを感じたと思われる。

実験考察問題、グラフや図から解答を導く問題(問112、問115、問116、問117、問118)が出題された。

 

4.衛生【やや難

性感染症のグラフ(問124)や食品添加物の構造式(問128)の問題の難易度は例年通りだった。

中毒原因物質のスクリーニング法に関する問題(問133)では、構造式から読み取る問題が出題され、知識と絡めながら解答を導かなくてはならないため、難しく感じたと思われる。

過去問での出題もあまりなかったため、正答肢を絞り切れなかったように感じた。

 

5.薬理【平易

病態・薬物治療との連問が3題出題(問156~157、問162~163、問165~166)され、初出題の薬物(問154、問156、問158、問163)も見られたが、難易度が低下したと考えられる。

全体を通しては、基本的な薬物の薬理作用を問う問題がほとんどであった。

 

6.病態・薬物治療【中等】

薬理との連問が3題出題(問156~157、問162~163、問165~166)された。

例年通り、疾病から薬剤を選択する問題や疾病の病態についての問題が出題されていた。

検査値等しっかりと把握できていれば、解答を導き出せる問題であった。

全体として既出問題で出題されていた内容が多く、比較的得点しやすい問題が多かった。

 

7.薬剤【中等】

薬物動態に関しては、例年通り、グラフや計算問題が出題(問169、問170、問171、問175)されており、難易度はそれほど高くないように思える。

製剤に関しては、グラフから読み取る問題(問177、問178)があり、基本事項を理解した上で解く必要があった。

図から読み取る問題(問181)もあったが、比較的得点しやすい問題だった。

 

8.法規・制度・倫理【中等】

再生医療等製品(問143)やQALY に関する問題(問148)は意味を問う新傾向の問題があり、難易度が上がったように感じた。

それ以外は例年通りの難易度であった。

実践問題解説

1.物理【やや平易

計算問題(問196,問199,問201)が3問出題されたので,焦る受験生も多くいたのではないかと思われるが,その内容は落ち着いて考えれば解ける問題である。凍結乾燥の問題(問202)も,知っておくべき問題である。

 

2.化学【やや平易

去年より易化したと思われる。

コリンエステラーゼの問題(問209)や補酵素の問題(問210)も,一般的な反応なので解答し易かったのではないか。

また写真を用いた問題(問217)が出題されたが,平易な問題であった。

 

3.生物【中等】

図を用いた問題(問222)が出題され、薬理の知識も必要としたため、難しく感じたと思われる。検査項目(問221、問225)に関する問題があり、臨床を意識した問題が見られた。

 

4.衛生【中等】

計算問題が 4題(問229、問237、問238、問242)出題されており、実質安全量(VSD)に関する問題は初出題で難易度は高く感じたと思われる。

鉛中毒に関する構造式を利用した出題(問241)があったが、リード文の検査結果から導くこともできたため、難易度は低い。

 

5.薬理【平易

薬の作用機序に関しては、既出問題でも多く見られていたため、比較的得点しやすいと考えられる。

実務では抗精神病薬の等価換算表を用いた計算問題(問247)や心電図を読み取る問題(問255)の出題があり、心電図問題は病態・薬物治療では出題されているが、薬理では初出題になっている。

なお、110回では薬理を絡めた連問の出題はなかった。

 

6.病態・薬物治療【中等】

109回同様、情報・検定の出題はなく、病態・薬物治療が出題されていた。

例年通り、症例と検査値から患者の疾患を推測する問題があり、例年通りの難易度である。妊婦に関する問題が2問(問294、問296)出題されており、妊婦に使用できる薬剤についての知識が必要であった。

 

7.薬剤【中等】

薬物動態学5問、製剤学5問の出題であった。

例年通り、グラフや医薬品の構造の問題(問274、問276)が出題され、知識と絡めながら解く必要があった。

今回は、計算問題の出題は見られなかった。なお、帯状疱疹ワクチン(問282~289)は初出題で、知識がないと難しく感じたと思われる。

 

8.法規・制度・倫理【中等】

例年、基本を踏まえた上での設問なので平易ではないが、難易度的には例年どおり。処方箋を使用した問題が6問出題されており、その薬剤の取り扱いや管理方法、規制に関する問題であった。

医療機器に関する問題(問307)もあり、制度上の取り扱いについても知っておく必要があったと言える。

問320、問323のように、薬剤管理指導や地域包括ケアシステムについては今後ますます薬局・薬剤師の重要度が高くなるので、必須の知識と言える。

 

9.実務【中等】

図を用いた問題があったが、OSCEや実習などでしっかりと理解していれば容易に解けたと考えられる。

例年通り、症例や検査値を用いた出題が多くみられた。計算問題(問339)の出題があったが、既出問題でも見られたような問題だったため、難易度は高くない。

CESの国試対策コース 詳細はこちら

 

著者プロフィール

CES薬剤師国試予備校 講師

アメリカの大学・大学院を卒業後、再受験にて薬学部に入学。再試・留年はなく、ストレートで国家試験にも合格。 卒業後は薬局薬剤師を経て、現在はCES薬剤師国家試験予備校の講師。 薬剤師国家試験のゴロサイト『ゴロナビ〜薬剤師国家試験に勝つ〜』を運営中